『46億年の記憶』 ~命、それは奇跡の旅路~   【新編集版】
「妊婦が感染したらどうなるの?」

「わからない」

 新は力なく首を横に振った。

「まだこのウイルスのことがよくわかっていないから、妊婦に関する影響についてもなんの情報もないんだ。だから、かからないように十分注意しなければいけないということしか言えない」

 そこで顔を曇らせたが、すぐに思い直したように、同じウイルス疾患であるインフルエンザと妊婦について語り始めた。

「インフルエンザの場合は妊娠しているからといって感染しやすいということはないんだけど、一度かかると心肺機能や免疫機能に変化を起こして重症化しやすいことがわかっているんだ。でも、君は予防接種を済ませているし、外出する時はマスクをしているから、油断さえしなければそんなに心配することはないと思うよ」

 考子はその説明を聞いてちょっとほっとしたが、今聞いたのはインフルエンザであって未知のウイルスのことではないことに一抹の不安を覚えた。

「インフルエンザのことはわかったけど、今度のウイルスに対してはどうすればいいの?」

 新はまた頭を振った。

「さっきも言ったけど、まだ情報がほとんどないんだ。だから、なんとも言えない。それに、ワクチンも治療薬もまだないから、徹底的に予防をするしかないと思うよ。外出する時はマスクをする。混雑した場所へは近寄らない。咳やくしゃみをしている人には近づかない。家に帰った時は手洗いとうがいを励行(れいこう)する。睡眠と休息を十分にとって健康状態を維持する。そんなところかな」

「わかったわ。今日からそれを徹底するわ。でも、未知のウイルスのことで何かわかったらすぐに教えてね」

「わかってる。真っ先に教えるよ」

< 69 / 195 >

この作品をシェア

pagetop