繰り返し何度も私を殺すその人が何度死に戻っても好きな件
 お忍びで下町へも遊びに行ったし、いつか堂々とふたりで皆の前に出てみたいという長年の夢も、お茶会のエスコートとしてテオドルにして貰い叶った。
 まぁ、いつもテオドルに頼むせいで父が拗ねて大変なのだが、その父の機嫌を直すためのプレゼントもふたりで選んだ。

(殺される素振りも何もないのは、まだ二年の猶予期間があるからかしら?)

 過去三回死んだのはいつも私が二十歳の時だった。
 ならばあと二年の猶予があるのかもしれない。

(二年後に何があるのかはわからないけれど)

 前回私が死ぬキッカケとなった先生はもういないし、その前に死ぬキッカケになった借金もテレーゼ子爵との結婚もない。
 何が引き金になるのかはわからない以上油断は出来ないが、それでもこの猶予期間はテオドルと楽しく過ごせるのだと思うと胸が高鳴った。

「ソフィ」

 テオドルが優しく私の名前を呼ぶ。
 その声に釣られて顔をあげると、そっと彼の指先が私の頬に触れた。

「っ」
「ほら、髪の毛食べていたぞ」
「あ……ありがとう」

 柔らかく笑ったテオドルにドキドキとしたのと同じくらい、口付けを期待していた自分が恥ずかしい。
 今の私たちは恋人ではなく兄妹で、だからこそ堂々と側に居れる代わりに人目を盗んで交わした口付けは出来ないのだ。

(でも私たちに血の繋がりはないわ)
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