あなたと運命の番になる
蘭は冷静になり、今の現状を把握する。

「すみません!」

蘭は和真にしてしまったことを謝る。

「山城さんが怖いんじゃないんです…。いつも親切にしてもらってるし、感謝してます。だけど、つがい…。」

蘭は番と言う言葉を発して身震いがする。
過去のことを今だに引きずってしまう弱い自分が嫌になる。急に震えたりして、和真は驚いただろう。震えた理由を言わなきゃと思うが上手く伝えられない。

「俺のこと怖くないって言ってくれてありがとうね。俺が急に話したからびっくりしたよな。今すぐどうこうすることはないし、俺は蘭ちゃんの同意なくやるつもりもないよ。俺も薬飲んでるから、急に襲ったりはしない。まあ、長時間匂いにあてられるとしんどいけどな。」

和真は蘭の目を見て微笑み、ぎゅっと手を握った。
震えた理由を聞くこともなく、蘭のペースに合わせようとしてくれる。蘭は和真の優しさに目頭が熱くなり、涙がこぼれる。

「あっ、ごめんなさい。」

蘭はあわてて手で涙をふく。

「もう大丈夫だから。何かあれば俺が守る。」

和真はそう言って、蘭を見つめて、涙をふく。

Ωだし、男性からこの先一生そんなこと言ってもらえる日は来ないと思っていた。

蘭は涙があふれだす。
泣くのをとめようと思うが、とまらない。
嗚咽が漏れる。

和真は蘭を横から抱きしめ、背中を優しくさする。

「す…びま…せん。」

蘭は涙で和真の服が濡れるのを気にして、パッと離れようとする。

「気にしなくていいよ。俺はこうしていたい。」

和真はそう言って、少し強く抱きしめる。

蘭は和真の優しさに涙がとまらなかった。
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