あなたと運命の番になる
和真は車を走らせる。
遊助が向かっている場所は想像がついていた。探偵に定期的に見張りをさせており、その場所によく行っていると話が来ていたからだ。

蘭は彼の話をするだけで泣いて震えていた。そんな蘭が彼と2人きりなんてどんな恐怖か。想像しただけで、怒りが溢れ出す。
また、番にされてしまうという最悪の状況を考えると体の芯まで冷えていく。蘭が別の男のものになるなんて、考えられない。どうか無事でいてくれと祈るばかりだ。



家の前に着くと、警察がすでに待機していた。騒ぎ立てると、遊助は蘭を慌てて番にするだろう。なので冷静に対応することが求められた。

大きな窓の鍵を解錠、玄関の扉のオートロックを外して侵入する。鍵の解錠にはその手のスペシャリストに頼んだ。オートロックの解除は山中樹が自社の情報部に頼んで一緒にやってくれている。

しばらくして両方の施錠が解除できた。
警察が一気に侵入する。和真も一緒に中に入る。


侵入すると蘭はソファの上で寝かされており、上から和真が組み敷いていた。

「誰だっ!」

遊助の大きな声が響く。オートロックも簡易なものではなかったし、そもそもこの場所がそう簡単に見つかるわけがないと踏んでいた。それに蘭を目の前にしてテンションが上がり、油断していた。

遊助は慌てて、蘭の肩を噛もうとする。ここを逃すともう番にはなれないと瞬時に感じた。

「やめ・て・くださ・・い。」

蘭の顔は青白く憔悴しきっている。
抵抗しようとする力ももう無くなっている様だった。


警察と和真が咄嗟に2人のところに向かう。
噛む直前で警察の手により、引き離される。

「やめろーーーー!!なにするんだー!」

遊助の声が響き渡っていた。

和真はベッドから落ちそうになった蘭を抱きしめる。

「蘭!!大丈夫か??もう安心だ!!蘭!!」

蘭はぐったりしており、目の焦点が合わない。

「蘭、蘭!!!」

和真が何度も呼びかけ、声をかけ続けると、蘭の目に少し意識が戻る。

「蘭!!大丈夫か??」

和真の心配そうな目と合う。
蘭は和真の顔を見ると涙が目に溜まっていく。

「かずま・・・さん・・。」

「蘭!よく頑張ったな。もう大丈夫だ!!」

和真も震える声で蘭を抱きしめた。
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