あなたと運命の番になる
定時には目標とする組み立てはすべて終了したので、仕事が終わる。
みんな早々と去っていく。
「大黒さん、では少しここで待っていてください!」
和真はさっそくコンベアを統括している産業用パソコンの前に座り、蘭には隣の椅子に座るよう促す。
過去のデータを遡り、1つのコンベアのみが夜分遅くまで稼働してる日をピックアップしていく。
だいたい3年分のデータを素早く解析する。
30分ほどして、集計が終わる。
「コンベアの過去の稼働状況をみて、残業したであろう日をピックアップしてみました。
約3年で52日です!」
和真は日時、コンベアの稼働時間の書いた表を蘭に渡す。
「ありがとうございます。
でも3年前のこの日に働いていたかなんて、覚えていません・・・。」
蘭が申し訳なさそうな表情をする。
「大黒さんの3年間の勤怠表も渡しておきます。もし、その日が出勤していたら、残業申請するというのはどうですか?
だいたい1つのコンベアだけが遅くまで長期間動くのは不自然です。多くの人で残業した場合は連動しますので。
それにこの工場に夜遅くまで残業しそうな人いますか?」
和真の言っていることは正しい。おそらく私が残業した日だろう。ただ、確実ではないのに、お金をもらってしまっていいのだろうか。
工場長にそんな昔の残業代を申請する勇気が出ない・・・。
3日前は申請しても構わないと言っていたが、こんなに多く持っていったらさすがに怒られる気がする。
「こんなに残業申請していいんですかね?
その・・・怒られたりしませんか?」
蘭の不安そうな表情を見て、和真は優しく微笑む。
「大黒さん、大丈夫ですから。残業申請は私も一緒に工場長の所に行きます。
それにもし大黒さんが残業していなかった日だったとしても、受領した側が承諾したのであれば、怒られたり、訴えられることはありません。
そんなことにならないと私が保障します!」
和真の的確で親切な意見を蘭はありがたく思う。自分が悩んでいることを丁寧に組み解き、優しく教えてくれる。和真が言っているなら大丈夫だという安心感を与えてくれる。
「ありがとうございます。勤務しているか確認して、残業申請書きますね。」
蘭は大量の残業申請書の紙を持ち帰ろうとする。52枚分確認して書くとなるとなかなか大変だけど、嬉しいなと思う。残業手当が本当におりたら、母にちょっといいお肉で晩御飯作ってあげようと思う。母の喜ぶ顔を想像して顔がにやける。
「大黒さん、残業申請書手書きするつもりですか?」
「はい、もちろんそうですけど・・。」
「パソコンで簡単に入力できる方法があるので、勤務しているかさえ確認しといていただけたら、明日のお昼に私が入力しますよ。その足で残業申請を工場長にしてしまいましょう。」
和真の提案に驚く。残業申請書をパソコンで入力なんて考えたことなかった。ありがたい提案だが、頼ってしまっていいのだろうか。さすがに色々やってもらいすぎている。
「さすがに悪いです・・。自分でできることは自分でやりますよ。こんなにも助けていただいて本当に感謝しています。」
蘭の謙虚な姿勢を和真はかわいらしく思う。
αということもあり、できて当然だと思われる。自分より和真がやった方が早い、簡単にできると思われてるので、仕事が流れ込みやすく、自然と仕事は増えてしまう。ただ、和真だってみんなと同じ時間軸で生きている。いくら作業が早くても仕事量が多ければ時間はかかる。
こちらが提案したのに、自分で頑張ると言ってもらったのはいつぶりだろうか。蘭に対等に扱って労ってもらえるのが嬉しかった。
ただ、蘭に対してはなんでもやってあげたくなる庇護欲のようなものが自然と芽生えている。
それが何故かは分からないが、もっと助けたい頼りにされたいと感じてしまう。
「気にしないでください。元は私が提案したことですし。明日私が入力しちゃいますね。」
「本当にいいんですか・・・。
なにからなにまでありがとうございます。」
蘭は丁寧に頭を下げる。
和真は自然と蘭の頭をわしゃわしゃと撫でた。
蘭は驚いて目を上げる。
和真は蘭が男性に恐怖心を持っているのに衝動的に触ったことをしまったと思い、手を離す。
「すみません・・つい。」
「大丈夫です。谷本さんのことは悪い人じゃないって分かってますから。」
触れられた時、少し怖さはあったが、和真が触ってるんだと思うと何故か怖さがぬけて、嬉しいような気持ちが駆け巡った。
2人は少し見つめ合い、お互い恥ずかしくなって目をそらした。
みんな早々と去っていく。
「大黒さん、では少しここで待っていてください!」
和真はさっそくコンベアを統括している産業用パソコンの前に座り、蘭には隣の椅子に座るよう促す。
過去のデータを遡り、1つのコンベアのみが夜分遅くまで稼働してる日をピックアップしていく。
だいたい3年分のデータを素早く解析する。
30分ほどして、集計が終わる。
「コンベアの過去の稼働状況をみて、残業したであろう日をピックアップしてみました。
約3年で52日です!」
和真は日時、コンベアの稼働時間の書いた表を蘭に渡す。
「ありがとうございます。
でも3年前のこの日に働いていたかなんて、覚えていません・・・。」
蘭が申し訳なさそうな表情をする。
「大黒さんの3年間の勤怠表も渡しておきます。もし、その日が出勤していたら、残業申請するというのはどうですか?
だいたい1つのコンベアだけが遅くまで長期間動くのは不自然です。多くの人で残業した場合は連動しますので。
それにこの工場に夜遅くまで残業しそうな人いますか?」
和真の言っていることは正しい。おそらく私が残業した日だろう。ただ、確実ではないのに、お金をもらってしまっていいのだろうか。
工場長にそんな昔の残業代を申請する勇気が出ない・・・。
3日前は申請しても構わないと言っていたが、こんなに多く持っていったらさすがに怒られる気がする。
「こんなに残業申請していいんですかね?
その・・・怒られたりしませんか?」
蘭の不安そうな表情を見て、和真は優しく微笑む。
「大黒さん、大丈夫ですから。残業申請は私も一緒に工場長の所に行きます。
それにもし大黒さんが残業していなかった日だったとしても、受領した側が承諾したのであれば、怒られたり、訴えられることはありません。
そんなことにならないと私が保障します!」
和真の的確で親切な意見を蘭はありがたく思う。自分が悩んでいることを丁寧に組み解き、優しく教えてくれる。和真が言っているなら大丈夫だという安心感を与えてくれる。
「ありがとうございます。勤務しているか確認して、残業申請書きますね。」
蘭は大量の残業申請書の紙を持ち帰ろうとする。52枚分確認して書くとなるとなかなか大変だけど、嬉しいなと思う。残業手当が本当におりたら、母にちょっといいお肉で晩御飯作ってあげようと思う。母の喜ぶ顔を想像して顔がにやける。
「大黒さん、残業申請書手書きするつもりですか?」
「はい、もちろんそうですけど・・。」
「パソコンで簡単に入力できる方法があるので、勤務しているかさえ確認しといていただけたら、明日のお昼に私が入力しますよ。その足で残業申請を工場長にしてしまいましょう。」
和真の提案に驚く。残業申請書をパソコンで入力なんて考えたことなかった。ありがたい提案だが、頼ってしまっていいのだろうか。さすがに色々やってもらいすぎている。
「さすがに悪いです・・。自分でできることは自分でやりますよ。こんなにも助けていただいて本当に感謝しています。」
蘭の謙虚な姿勢を和真はかわいらしく思う。
αということもあり、できて当然だと思われる。自分より和真がやった方が早い、簡単にできると思われてるので、仕事が流れ込みやすく、自然と仕事は増えてしまう。ただ、和真だってみんなと同じ時間軸で生きている。いくら作業が早くても仕事量が多ければ時間はかかる。
こちらが提案したのに、自分で頑張ると言ってもらったのはいつぶりだろうか。蘭に対等に扱って労ってもらえるのが嬉しかった。
ただ、蘭に対してはなんでもやってあげたくなる庇護欲のようなものが自然と芽生えている。
それが何故かは分からないが、もっと助けたい頼りにされたいと感じてしまう。
「気にしないでください。元は私が提案したことですし。明日私が入力しちゃいますね。」
「本当にいいんですか・・・。
なにからなにまでありがとうございます。」
蘭は丁寧に頭を下げる。
和真は自然と蘭の頭をわしゃわしゃと撫でた。
蘭は驚いて目を上げる。
和真は蘭が男性に恐怖心を持っているのに衝動的に触ったことをしまったと思い、手を離す。
「すみません・・つい。」
「大丈夫です。谷本さんのことは悪い人じゃないって分かってますから。」
触れられた時、少し怖さはあったが、和真が触ってるんだと思うと何故か怖さがぬけて、嬉しいような気持ちが駆け巡った。
2人は少し見つめ合い、お互い恥ずかしくなって目をそらした。