あなたと運命の番になる
「大黒さん、今日は送っていくので、乗ってください。」

工場を出たあと、別れようとする蘭に声をかける。

「悪いですよ・・。今日はまだ明るいですし、歩いて帰れます。」

この前と違って、今日は定刻より1時間ほど遅くなっただけだ。まだ明るく、人通りも多い。

「でも車の方が早く帰れますよ。今日は呼び止めてしまったので、乗ってください。」

「私のために残ってもらったんですから、谷本さんにむしろ手間かけてしまっているくらいです・・。」

「そんなことは気にしないでください。それか2人きりの空間がやっぱり怖いですか?今日も薬を手に持ってもらっていいので。」

先程、頭を触ってしまったことで、怖がられて断られてるのかなと不安になる。
もちろん怖がらせるつもりなんてなかったし、軽い接触しかしていない。
ただ、些細なことでも蘭にとっては恐怖の対象だったのではないかと思う。

「2人きりになるのが怖くて断ってるわけじゃないです!ただご迷惑おかけするのが申し訳なくて・・。」

蘭は誤解を解きたく、慌てて伝える。もちろん2人の空間は得意ではない。ただこれまでの言動で和真のことは信用出来る人だと感じている。

「そうですか!よかった。じゃあ送るので、乗ってください。」

蘭に怖がられてないとわかり、ほっとする。
車に誘導し、蘭が薬を手に持ったのを確認して、車を発進させた。
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