あなたと運命の番になる
「やっぱり、気を使わず飲む酒はうめーわ。」

樹はシャツのボタンを第2まで空けて、ネクタイを緩めて飲む。

和真も一緒に飲んだ。
最近の仕事状況をお互いに話す。

「工場の状況やべーな。そりゃ立て直し大変そうだ。
まあでもお前ならなんとかするだろうけど笑
もうプランあるんだろ。」

樹の問いかけに和真はニヤッとして、軽くプランを伝える。大胆な方法にさすがだと思うが少し冷酷だなとも思った。

「すごいとは思うけど、お前にしてはめずらしく人間関係に踏み込んでんな。工場でなんかあったか?」

和真はあまり人間関係に興味が無いイメージだ。業績全体のことやそのための人材配置などは考えるが、一人一人の残業やいじめなどに目を向けるタイプではない。
この言葉だけ聞けば、悪く聞こえるが、仕事の出来不出来で人をみるのである意味平等だ。媚びを売るようなこともないし、どんなことで休むことになっても決して理由を聞いたりはしない。オンオフをわける。仕事の付き合いなのだから、仕事さえしっかりやってくれたらいいし、そこを評価するという考え方だ。


「いや別になんにもないよ。
たださ、Ωって生きにくいんだなと思っただけ。」

樹は目を丸くする。
もちろんこの世界に生きていたら第2の性を考えることはある。特に‪α‬として生まれたら思うことはあるだろう。ただ、和真がΩの話をするのを初めて聞いた。

「なんかあったのか?」

和真は蘭の話をする。Ωとして辛い状況でも頑張ってるところを評価したいという内容だ。

「なぁ、和真。お前、その子のこと好きなのか?
もしかして番(つがい)か?」

「はぁ?なんでそうなる。ただ俺は仕事がしやすく・・・。」

和真の言葉を遮って樹は続ける。

「和真が1人の職員にそこまで深入りしているのはかなり珍しいと思う。てか初めてじゃないのか?
番は本能的に惹かれるものらしい。
ヒートにあてられる前からなんとなくその相手に目がいってしまうものらしいぞ。」

「樹、ちょっとまてよ。
さすがにそんな感情はない。
それに80億人以上いるこの世界からたった1人の番を見つけるのは普通に考えたら不可能だ。」




「俺の両親は番だ。」

「えっ。」
和真は驚く。番同士の結婚はテレビなどで聞いた事あるが、実際にしている人を初めて聞いた。

「別に隠してなんかないよ。ただ、わざわざ親の馴れ初めを友達に話さないだろ。」

そう言って樹は家族の話をする。
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