ストーカー三昧・浪曲、小話、落語

いつの世も同じか?

(歌い終わって)いかがでしたか、この唖蝉坊のわからない節…え?わからない?…洒落を云っちゃあいけないよ、お客さん(観客笑う)。わたくしが思いまするにこの「(巷の人間たちは)金に眼が眩んで義理も人情もわからなくなり」とか「金持ちは妾を囲って酒飲んで毎日遊んで贅沢三昧、それでいながら金が増えるのみ。他方で、働く者はあせくせと夢中になって働くが貧乏する」などという文句は絶妙じゃないですか。他方、働く者はあせくせと夢中になって働くが貧乏をする」などという文句は絶妙じゃないですか。また「世の中には賢い人がなんぼでも居るのに馬鹿者が議員となり、その議員というのも皆腰抜けで、いつも議席でぼんやり、居眠りし放題。これじゃ人か人形かわからない」とも歌っております。どうです、皆さん。この演歌を唖蝉坊が歌ったのは実に大正時代ですよ。これ、今とどう違うんですか…?
 そうすなあ、つくづくわたくしが思いまするに、人というものは、人の世というものはいつの時代も結局同じということでしょうか。金儲けのうまい奴、抜け目のない奴、図々しい奴らがいい思いをし、真面目に働く者たちが馬鹿を見る…それに憤慨しながらもしかしこちらはこちらで、庶民同士で互いに足の引っ張り合いをする騙し合いをする…などなど、悲しくも、くやしくも、はたまた狂おしくも、まあ畢竟、世の中とはこのようなものなのでございましょう…。
 が、しかし(張り扇一擲!)、しかしですよ。これで終わってしまっては、このような切ない悟りを得ただけで人生を終えてしまっては、これは情けないじゃないですか。いかがです?もしそれだけだったら私などはジャスト「つまらない」ですね。これじゃ何の為に生まれて来たんだかわからない…つまり〝わからない節〟ですね(観客笑う)。
< 43 / 56 >

この作品をシェア

pagetop