ストーカー三昧・浪曲、小話、落語

つまらないから止めちまえ

 えーそれで、かえらまに…あ、この「かえらまに」というのは「反対に」という意味です。古語ですね。いやちょっとわたくしの教養のあるところをご披露したくって…ま、余計です(観客笑う)。えー、で、かえらまに、これへの反発と糾弾と云うか怨嗟の思いは〝ラメチャンタラギッチョンチョンデ〟の替え歌や添田唖蝉坊の〝わからない節〟などをご披露することで既にやっちゃっている分けです。ですがこんなことをしてみても「社会をいくら糾弾してみてもなんにも変わりゃしないんだ」と私は最前(44ページで)既に申し上げました。いくら糾弾したって格差上組を主体とする社会はビクともしません。却ってせせら笑うだけでこちらが惨めな思いをするだけです。
 えー、すればですよ、〝こんな世の中〟に反発し糾弾すること自体が我々にとってはやはり〝苦しみ〟じゃないですか。前述した「おい、俺の貯金額を見てみろ…」の類の、格差上組からの、その自己顕示から受ける圧迫とそれゆえの苦しみと裏腹のものです。その再舐めというものです。だったらそんなものはつまらないから止めるに如かずです。ま、しかし、そこに〝己というものがなく〟しこうして自己顕示と足ることを知らぬ欲望に充ちたこの格差社会を正したいと云うのであれば、それをするのもあるいは吝(やぶさ)かではないでしょう。だがしかし、我々は評論家じゃないんですから敢てそんなことにかかずらう必要もない分けです。そんなことやってたら人生終わっちゃいますよ(観客笑う)。変わらぬものは古代文字、神代の昔からの格差社会です。互いを誇示し合い、あるいは卑下・糾弾し合う、見栄っ張りな、ある意味で薄っぺらなオチャラケた社会です。しかしそんな中でも互いを助け合い、生かし合う人々が居たのもまた確かなことなのです。
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