ならば、悪女になりましょう~亡き者にした令嬢からやり返される気分はいかがですか?~(試し読み)
「エルドリック殿下は、私が退屈しているのではないかと、親切に声をかけてくださっただけ。それに、一曲しか踊っていないもの。それをふしだらと言うのであれば、婚約者のいる女性は誰ともダンスができないことになってしまうわ」
今夜もフィリオスはアウレリアをエスコートすらせず、リリアンべったりだった。集まっている貴族達の非難の目にようやく気づいたらしいリリアンは、口を閉じる。
「先に帰るわ」
それ以上何も言えなくなってしまったららしいリリアンにそう告げ、身を翻す。ちらりと視線の隅で確認したら、リリアンはエルドリックに近づいていた。
「エルドリック殿下、異母姉に深くかかわってはいけませんわ。身内の恥をさらすようですが、婚約者を放置して遊びまわって……」
さっそくエルドリックにアウレリアの悪口を吹き込み始める。だが、戻って彼女の言葉を訂正する気にはなれなかった。
訂正したところで、リリアンが言葉の刃を止めるはずもない。
信じるか否かは相手次第だけれど、エルドリックはリリアンの言葉を信じないだろう。
屋敷に戻る馬車の中、両手を胸の前で組み合わせ、何度も自分に言い聞かせた。
今夜もフィリオスはアウレリアをエスコートすらせず、リリアンべったりだった。集まっている貴族達の非難の目にようやく気づいたらしいリリアンは、口を閉じる。
「先に帰るわ」
それ以上何も言えなくなってしまったららしいリリアンにそう告げ、身を翻す。ちらりと視線の隅で確認したら、リリアンはエルドリックに近づいていた。
「エルドリック殿下、異母姉に深くかかわってはいけませんわ。身内の恥をさらすようですが、婚約者を放置して遊びまわって……」
さっそくエルドリックにアウレリアの悪口を吹き込み始める。だが、戻って彼女の言葉を訂正する気にはなれなかった。
訂正したところで、リリアンが言葉の刃を止めるはずもない。
信じるか否かは相手次第だけれど、エルドリックはリリアンの言葉を信じないだろう。
屋敷に戻る馬車の中、両手を胸の前で組み合わせ、何度も自分に言い聞かせた。