ならば、悪女になりましょう~亡き者にした令嬢からやり返される気分はいかがですか?~(試し読み)
(……ええ、大丈夫、私は大丈夫)

 どんな扱いを受けようが、デュモン侯爵家の娘である自尊心を捨ててはならない。
 フィリオスとの婚約は、王妃のお声がかり。こちらから解消するなんてできない。少なくとも、今はまだ。
 どれだけ悪評を立てられても、理解してくれる人はきっといる。そう、エルドリックみたいに。

(なんで、あの方はリリアンの言葉を信じないって思えるのかしら)

 座席の背もたれに背中を預け、深くため息をつく。
 いくら妬まれたとしても、アウレリアには他の道はない――いや、ないわけではないのだが、もうしばらくの間はそれを明らかにするわけにはいかないのだ。

 エルドリックとダンスをした翌々日。
 アウレリアが向かっているのは、ノクス商会という商会が経営している店舗のうちの一軒だった。
 ノクス商会は、ゼノビア王国内でも近頃力をつけてきた人気の商会だ。商会長のノクスが、独立して商会を立ち上げたのは、今から六年前のこと。
 デュモン侯爵家で働いていた彼は、侯爵家でもののよしあしを見抜く目を養ってから独立し、一気に商会を大きくした、というのが世間の見解だ。

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