ならば、悪女になりましょう~亡き者にした令嬢からやり返される気分はいかがですか?~(試し読み)
 ノクスに目をつけて交渉したあの時の自分は、我ながら冴えていたと今でも思っている。
 あの頃は、王子の婚約者になるなんて考えていなかった。いつか、家を離れ、平民として暮らすことも念頭に置いていた。
 ノクスへの出資も、貴族に好まれそうな商品を集めるのも、いつか独立するための準備だったのだが、自分で店に立つようになってみると意外と楽しい。

「……アウレリア様、あなたが店に立つ必要はないんです」
「お願い、ノクス。いつまでも続けていられないでしょう? ぎりぎりの時まで、こうしていたいの。お客様の声を直接聞く機会はとても貴重だから」

 今のアウレリアは、目立つ金髪の上に茶髪の鬘(かつら)をかぶっていた。茶色い髪に青い目は、平民の間でもそこそこみられる組み合わせだ。
 いつもはきりっと見えるように化粧をしているのが、垂れ目に見えるように、研究を重ねた巧みな化粧で、顔立ちまで違っているように見せかけている。
 知り合いがこの店を訪れたとしてもバレない自信はある。いや、今まで何度か知人がこの店を訪れたのだが、誰も気が付かなかった。

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