ならば、悪女になりましょう~亡き者にした令嬢からやり返される気分はいかがですか?~(試し読み)
 男性の従業員は、白いシャツに黒の上着と黒のトラウザーズ。そして、黒いエプロンの組み合わせだ。

「二階の席、いいかしら?」

 声をかけられたアウレリアは、「嘘でしょ!」と心の中で叫んだ。
 開店早々やってきたのは、異母妹のリリアンである。彼女は、ふたりの令嬢と一緒だった。
 クラーラ・ベネディクト伯爵令嬢、そして、エミリー・ヴォーン伯爵令嬢である。ベネディクト家とヴォーン家は、デュモン家と親しい関係にある家だ。

「申し訳ございません、本日、二階の席はすべてご予約が入っておりまして」

 貴族が相手であるので、アウレリアは深々と申し訳なさそうに頭を下げた。リリアンと顔を合わせたくなかったからではなく、本当に予約が入っているのだ。
 ここまで間近で話しているのに、三人ともアウレリアに気づかないのにはびっくりだ。リリアンが入ってきた時にはどうしようかと焦ったが、堂々としていれば問題なさそうだ。

「あら、そうなの? そうね、予約を入れるのを忘れていたわ。でも、どうにかならない? デュモン侯爵家とはいい関係を築いておきたいでしょう?」

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