ならば、悪女になりましょう~亡き者にした令嬢からやり返される気分はいかがですか?~(試し読み)
 いきなりリリアンが家の圧力をかけ始めたところで、ノクスがすすっと近づいてきた。
 そして、ひそひそとリリアンに向かって囁く。

「二階の席は予約が入っているのですが、三階にお席をご用意いたします。もし、よろしければそちらに……」
「三階?」

 リリアンは首を傾げ、アウレリアは思わず声をあげた。
 三階は商会を訪れる客人と面会をするための部屋だ。
 貴族の使いが商談に訪れることもあるため、室内は貴族の屋敷に置かれていても見劣りしないだけの調度品で整えている。
 今まで、予約をしていなかった客のために三階を解放したことはなかった。

「会長、ですが……三階は」
「今日は、会議の予定はないから大丈夫だよ。デュモン侯爵家の方をお帰しするわけにもいかないだろう」

 ノクスとアウレリアは対等の立場であるが、今はノクスの方が上司である。ミアとしてここにいる以上、アウレリアは彼の指示に従うべきだ。

「では、ミア。三階を支度してきて」
「かしこまりました」

 ノクスの命令で階段を駆け上がったアウレリアは、素早く室内を見回した。
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