ならば、悪女になりましょう～亡き者にした令嬢からやり返される気分はいかがですか？～（試し読み）

　いつ使っても問題ないように、室内はきちんと掃除されている。花も新しいものが飾られている。
　テーブルクロスを直し、銀の食器をテーブルに並べてから、一階へと戻った。

「まあ、素敵な部屋。いつもは使わないの？」
「ええ。ここは仕事のための部屋ですので。お嬢様達には少々無骨かもしれませんが」

　商会長のノクス自ら、リリアン達を接客するつもりらしく、ノクスがリリアン達を案内してくる。

「なかなか素敵！　平民の店にしては悪くないわ。クラーラもエミリーもそう思うでしょう？」

　無邪気に話すリリアンは、ノクスが元侯爵家の使用人であったことには気づいていない。
　ノクスが侯爵家で働いていたのは、今から六年前のこと。
　リリアンと接する機会がほとんどないまま、彼は侯爵家を去ったから、彼の顔を見ても元使用人だと気づかなくても不思議ではない。

「ミア、お茶をお持ちして」
「はい、会長」

　普段は接客しないノクス自ら接客することに、リリアン達は優越感を抱いているようだった。もっとも、ノクスがこちらの店舗に来ることも珍しいのだ。