ならば、悪女になりましょう~亡き者にした令嬢からやり返される気分はいかがですか?~(試し読み)
 それが終わったら、ノクスと次に仕入れる商品の打ち合わせ。そして、ノクスが入手してきた貴族についての情報も確認する。
 自分の身を守るのに情報は必要だし、様々な貴族の屋敷と取引をしているノクスならば、その情報を入手するのもたやすい。
 ノクスは自分の仕事部屋に入り、アウレリアは一階での接客に戻った時だった。
 いらっしゃいませ、と口にしかけそこで固まる。供も連れず、ひとりで入ってきたのは、昨夜顔を合わせたエルドリックだった。

「い、いらっしゃいませ!」

 店に入ってきた客が誰であれ、放置するわけにはいかない。慌てて自分を叱咤し、声をあげれば、思っていた以上に裏返った声が出た。

(私、なにをやっているのかしら……)

 ミアとして店に立つようになって一年以上。
 たしかに毎日店に出ているわけではないが、かといって素人でもない。だが、エルドリックを見ただけで、こんなにも緊張してしまっている。

「……ん?」

 だが、アウレリアの様子を見たエルドリックは、首を傾げた。

(まさか……)

 アウレリアの背中を、冷たいものが流れ落ちる。
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