傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける
 白の半袖シャツにネイビーのスラックスというシンプルでラフな出立ち。長い脚を組んでパソコンに向かう様子はそれだけで様になっている。
 水着姿しか見ていなかったから、服を着ているとなんだか別人のように思える。ただ、シャツ越しからでも隆起した筋肉がその存在感を示していて、昼間に見た彼の雄々しい肉体を思い出し、凪の頬に自然と朱がさす。
 食い入るように眺めてしまっていると、彼がふとこちらを見た。

(や、やばっ……)

 目が合ってしまい、凪はドギマギとしながら一歩下がった。
 盗み見がバレて気まずいことこの上ない。しかもジロジロと食い入るように見てしまっていたのだ。不快に思われたらどうしよう。

 だが、凪の予想に反して、彼はニッと口角を上げた。

「よかった、元気そうだな」
「は、はい……あの、昼間はお世話になりました」

 どうやら盗み見はバレていなかったらしい。安堵していると、彼がパソコンを素早くブリーフケースにしまい、凪の元へ歩み寄ってくる。

「ちょっと心配してたんだ。気分はどう?眩暈がするとか吐き気があるとか、そういうのは?」
「大丈夫です。お気遣いいただいちゃってすみません」
「気遣いも何も、俺が個人的に気になっていただけだから」

 個人的に?それってどういう意味なんだろう。
 凪の鼓動が無駄に早くなっていく。口の中に溜まった唾液をゴクリと飲み込むと、漣は爽やかな笑みを浮かべた。
< 18 / 68 >

この作品をシェア

pagetop