傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける
「どうした、凪?」
「ううん、なんでも。漣が普通のサラリーマンって、ちょっと意外だなぁと思って」

 胸の痛みをかき消すように、わざと明るい声を出す。
 漣は鼻の頭をクシャッとさせて、おかしそうに笑った。
 
「なんだよそれ。どういう意味だ?」
「だってあんなに泳ぐの上手なんだもん。体もバキバキに鍛えてたし、てっきりスポーツ系の仕事をしてるんだと思ってたから」
「ふーん?そう思うくらい、凪は俺の体をよく見てくれてたってわけか」
「なっ……」

 悪辣な笑みを浮かべる漣に、凪は絶句する。……なんといっても図星なので。

「べ、別にそこまで……いや、まあ、ちょっとは見てたけど……でもそんなジッと見てたってわけじゃ……」
「でも記憶に留めるくらいには見てくれてたんだろ?俺の体、そんなによかった?」
「もう!変な風に言わないでよ!」
「ハハハッ」

 完全にからかわれている。でも不思議と嫌な気はしない。
 漣との会話は楽しかった。この三日間、暗澹たる思いで過ごしていたことを忘れるほど。
 はしゃいだ自分の声を耳にして、こんな声も出せたんだと凪はひそかに驚いていた。
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