傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける

確かな約束

 翌朝、凪が目を覚ますとベッドの上には一人だけだった。
 昨夜――というか明け方まで交じり合い、最後は倒れ込むようにお互い抱き合って眠りに落ちたはずなのに、隣に漣がいない。
 手を伸ばして彼が眠っていたはずの場所を撫でるも、シーツは既に温もりを失っていた。

 ギシリ、と心臓が嫌な音を立てる。

(やっぱり、全部嘘だったんだ……)

 凪を好きだと言った言葉も、優しいキスも、全部。
 絶望に打ちひしがれ、凪は茫然とした。しばらく脱げ殻になっていたが、ふとベッドサイドのテーブルにメモ書きが残されていることに気がつく。

 体を起こす気力は一ミリも残っておらず、ぐーっと手を伸ばしてそれを掴んだ。横たわったままメモに目を通す。

 そこには、ライフセーバーのボランティアがお昼まであるので一緒にいられないことへのお詫びが、秀麗な文字で書き記されていた。それと、業務が終わったら迎えに行くから部屋で待っていてほしいという言葉と、彼のと思しき電話番号とメッセージアプリのIDが綴られていて。

 凪は肺に溜まった息を全て吐き出した。蝕んでいた不安は霧散していた。
 
 代わりに歓びで胸がいっぱいになる。一夜でポイ捨てされたのではなかった。安堵が込み上げると同時に、漣への愛しさも募る。
 凪は、ふふっと笑みをこぼしてメモ用紙を抱きしめて仰向けに寝返りを打った。

 安心したからか、昨夜の疲労もあって凪の意識は再び睡魔に呑まれていった。
< 39 / 68 >

この作品をシェア

pagetop