傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける
「ううん。いっぱい寝たし、昨日プールは行けなかったから泳いでみたかったの」
 
 プルメリアリゾートの温水プールでは、屋内外に十二の趣向を凝らしたプールとジャグジーが楽しめるのだ。ここまで大規模なプールは都内にもそれほどなく、凪は泳ぐのを楽しみにしていた。
 それに今は……
 
「……漣と、一緒に泳ぎたかったから」

 それと、もしかしたらこれが最後の機会かもしれないから。
 そんな興醒めするような本音は隠して告げると、漣に腰を引き寄せられた。
 
 逞しい胸板が凪の背中にピタリとくっつく。筋肉量が多いからか彼の体温は高い。彼に抱きしめられた昨夜の記憶が思い起こされて、凪の頬に赤みが差した。

「なんだよ、それ。かわいすぎるだろ。部屋に戻りたくなる」
「えっ!やだ!もう無理だからね!」
「冗談だよ」

 クックッと喉を鳴らす漣だが、いまいち信じきれずに凪は胡乱げに彼を見上げた。すると心外とばかりに漣が肩をすくめる。

「とりあえず軽く昼飯食って、それから二十五メートルプールで競争でもするか。負けた方が勝った方の言うことをなんでも聞くってのは?」
「……変なこと言わないでよ?」
「俺が勝ったら、凪から十回キスしてってお願いするだけ」
「多くない?!普通一回でしょ?」

 クスクスと笑いながら漣と戯れ合う。つい数日前はこんな風に自分が笑っているところなんて想像ができなかった。
 幸せを噛み締めてはにかんだ、そんな矢先だった。
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