傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける
「凪は……俺のことを知っていたのか……?」

 漣の声は心なしか沈んでいた。
 やっぱり彼は、凪に正体を知られたくなかったのだ。二人の関係に致命的な亀裂が走ったのを確信しながら、凪は沈痛な面持ちで頷いた。

「……友達が教えてくれたの。たまたま漣の写真を見せたら、雑誌に出てたって……それで、漣がSKリゾートの御曹司だって知って……瑠夏とのことはネットで調べて……」

 車のダッシュボードに視線を固定しながら凪は訥々と言葉を重ねた。
 秘密を暴いてしまう後ろめたさで胃がキリキリする。
 でももう何も知らないままでいた自分には戻れない。逃げることを許してもらえないのなら、心の内を全てぶちまけるしかない。

「それを見て、ああやっぱり私のことは遊びなんだなって思った……だから、漣とは終わりにしようって思ったの」
「瑠夏とは何もない」

 漣が血を吐くように苦しげに呟く。
 凪は彼の方を見ることなく、薄笑いを張り付けたまま静かに首を横に振った。
 
「でも、それってどうやって信じたらいいの?だってデマかどうかなんて、確かめることなんてできないでしょ。この先一緒にいても、心のどこかでずっと漣のことを疑っちゃうと思う。絶対いつかダメになる。なら、もうこれ以上漣と関わりたくない……」

 唇に弧を描いたまま、凪は込み上げそうになる嗚咽を必死で堪えていた。
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