傷心女子は極上ライフセーバーの蜜愛で甘くとろける
 まるで永遠にも感じられる時間だった。
 
 飛び込み台の上で静止していた漣がおもむろに動き出す。
 腕を振りかぶり、大きく屈伸して――威勢よく跳躍した。

 飛び立つ瞬間を目撃した凪がハッと息を止める。
 漣の体は一直線に落下していく。下へ、下へ。
 そして忘れていた呼吸を取り戻したのと同時に、目の前でバシャン!と大きな水飛沫が上がった。

 周囲から拍手と歓声が湧き起こる。凪は動くこともできず、目を大きく見開いて波紋が広がるプールを一心に見つめ続けた。

 ほどなくして浮かんできた漣は、眉を下げつつ大笑いしていた。目が合うと、晴れやかな表情を浮かべてこちらへ向けて手を振ってきて。凪は堪らず瞳を潤ませた。

 プールから上がった漣が、凪の目の前に立つ。彼は晴れやかな表情で凪に微笑んだ。

「凪、好きだ」

 息を呑んだ凪の瞳からたちまち涙が溢れ出す。唇を噛み締めても、手のひらをギュッと握っても、抑えられなかった。
 濡れるのも厭わず漣にふるいつくと、たちまち逞しい腕で抱き留められる。

「俺のこと、まだ信じられない?」

 隆々とした胸板に顔を埋めながら、凪は何度も首を横に振った。
 文字通り体を張って伝えてくれた彼の想いを疑えるはずがない。
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