過去夢の少女
☆☆☆

バカ。
ブス。
学校くんな。

他になにを書いたのか、もう覚えていない。
なにせ罵詈雑言の数々を机に書き連ねていったから、その文字は潰れて見えない部分もあった。

机が真っ黒になったころには私の胸のムカムカはスッキリと晴れていた。
それから一旦トイレで手を洗ってマジックの汚れを落としている間に河村結夏が登校してきていた。

教室へ入ると呆然としている彼女の後ろ姿があって、私達は目を見かわせてほくそ笑んだ。

「絵梨ちゃん恵ちゃんおはよう」
「みんなおはよう!」

私と恵の周りには数人のクラスメートたちが集まってきて、談笑が始まる。
元々席が近かった子たちで、なんとなく一緒に会話するようになった。

そんな中、河村結夏がひとりで掃除道具入れへ向かうのが見えた。
黙って雑巾を取り出して、机をふきはじめる。
そんな彼女に声をかける生徒は、誰もいなかったのだった。
< 41 / 186 >

この作品をシェア

pagetop