過去夢の少女
☆☆☆

「今朝は最高だったね!」

休憩時間になって廊下へ出た時、恵が必死に笑いをこらえながら言った。
それは河村結夏のことを言っているに違いなかった。
「うん。でもやっぱり、なんだか申し訳ないかも」

ラクガキをしたときは胸がスッとしたけれど、ふと我に返ってみるとかなりヒドイことをしたんじゃないかという気持ちになってきていた。

少なくとも、あれほどの罵詈雑言を書くべきじゃなかったかもと。
「なに言ってるの? あれ以上のことを絵梨のお母さんはされてるんだよ?」

「そうだけど……」
夢の中のお母さんはいつもひとりぼっちで、みんなに後ろ指をさされて笑われていた。

それは今の河村結夏とあまり変わらない状況だ。

その時のお母さんの気持を考えるなら、河村結夏に声をかけるべきじゃないかと思ったりもする。

「なに生ぬるいこと言ってるの?」
自分の気持ちを伝えると、恵の目が徐々に釣り合ってきた。
「だって、やっぱり結香は関係ないと思うし……」
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