過去夢の少女
そこから先は何もしなくても全員が河村結夏へボールを投げつけていた。

この場所を仕切っている先生がいなくて、これだけ人数が多ければ誰だってレベルの低い方に流れていく。

それがわかりやすく具現化されていた。

授業時間がほとんど終わってから体育館に戻ってきた恵は、流れている白々しい雰囲気を肌で感じ取ったようで、満足そうな笑みを浮かべる。

河村結夏はひとりで体育館の隅に座り込んでいる。
その髪の毛も体操着もひどく汚れて乱れていたけれど、誰も声をかけなかった。
「うまく行ったんだね?」

「もちろん。指は大丈夫?」
恵の指には一応包帯が巻かれていたけれど、もちろん突き指は嘘だ。
「私も見たかったけど、仕方ないよね。でも本番はこれからだっけ?」

恵の言葉に私は頷く。
そう、本番はそれからだ。

お母さんはみんなからイジメられた後、狭くて埃っぽくて暗い空間に閉じ込められた。
泣いても叫んでも誰も助けに来ない恐怖とひとりで戦っていた。

思い出すと腸が煮えくりかえってきて、今すぐにでも河村結夏を殺してやりたくなる。
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