旦那様、お約束通り半年が経ちましたのでお別れさせていただきます!〜呪われた辺境伯に嫁ぎましたが、初恋の騎士様が迎えにきました〜
5
メリッサ様がいなくなってから、開かずの部屋となっていた部屋の鍵を開ける。
何か起こるかもしれないと、皆が緊張していた。
恐る恐る扉を開けたのは、クリフォードだった。
「開けるぞ」
「勿体ぶらずに、旦那さまお早く」
クリフォード、エリーを庇うようにマクスとエリーが入室。
室内は、長年放置されていたとはおもえないほど、埃っぽくもなく綺麗だった。
突然、書き物机からコトリと何かが落ちる。
皆が一斉に物音のした方向を見る。
どこから現れたのか若い女性が、落ちた物を拾い上げていた。
「あなたは…?」
女性がこちらへと振り向く。
「メリッサ…」
若い女性に向かい、クリフォードは驚愕の眼差しを向けていた。
「お二人ともどなたに話しかけておられるのですか?」
エリーとクリフォードには見えている女性の姿を、マクスだけが確認出来ず、怪訝な顔をしていた。
「こんにちは、お久しぶりと言うべきかしら旦那様と…」
「え、エリーと申します。メリッサ様」
緩やかに波打つ金髪の美しい髪に、透き通るような肌、まるでお人形のようだった。
美、美少女…だわ
旦那様と並んだら、超絶美男美女のカップルだわ。
こんな方を蔑ろにしていたというの?
「そう、エリーと言うの。と、マクスだったわね。あぁ、マクスには私のことは視えてないと思うわ。」
「メリッサ!お前のせいで…今までどこにいた!」
「旦那様、眠れなくて苦しんでいるようね?ふふ」
「誰が旦那様だ⁉︎ お前がいなくなって、とっっくの昔に離縁は成立している。」
「そう、そうなのね…捜してもくれないのね」
メリッサは目線を下におろし、悲しみの表情を浮かべる。泣いてしまうのではないかと思われたが、先ほどまでの表情と一変する。
「な~にがそうなのね、だ、メリッサ!
お前のせいで私は」
「クリフ!呪いが解けないのは自分のせいでしょ!」
「だいたいお前は昔から…」
「ちょっとクリフ! 再婚したの……?
そちらが、あなたの……?
ちょっと、エリーさんとお話ししたいから、とりあえず出てって、クリフ!」
メリッサが軽く指を弾くと、クリフォードが部屋の外へ弾き出され尻餅をつく。
「イテッ、ちょっ待てメリッサ!」
マクスは、ゆっくりと丁寧に、見えない誰かによって運ばれていくように、浮かびながら部屋の外へと出される。
扉が閉まり、施錠の音がする。
「これで、ゆっくりお話しができるなね。怖がらないで。あなたに危害は加えないわ。」
メリッサは優雅にソファーに腰掛けると、エリーを手招きした。
誘われるように、エリーもソファーに腰掛ける。
「あなたが、私の後にクリフ…と結婚したの?」
「次と言いますが、正確には68番目のかなと……あ、ですが、行為をするのは100番目とおっしゃってたので、100番目の花嫁かもしれません」
「──は?」
狐につままれたような表情のメリッサに、エリーは、かいつまんで説明を始めた。
マクスから聞いた旦那様の非道な行いもふくめて、全部を。
「な、な、な、なんですってーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
メリッサは、奇声を発しながら、部屋中飛び回り始めた。
「なんてことなの!ばかクリフ!
クソクリフ!許せない許せない許せないおんなの敵!!!
どうしてそんな発想になるの!」
「メリッサさま、メリッサ様!
どうか落ち着いてくださいませ」
エリーは、飛び回るメリッサを宥めようと、必死に声をかける。
メリッサは何周か飛び回ると、落ち着きを取り戻し、ソファーに戻ってきた。
エリーは改めてメリッサを見る。
確かに少し透けている。
本当に幽霊なのかしら?
「あの、メリッサ様は、その、幽霊なのでしょうか?」
「あぁ、この姿だとそうみえるわよね。正確には生き霊というのかしら」
「生き霊?
では、メリッサ様は、生きておられるのですか??」
「ふふふ、あなた、幽霊かもしれないと思いながらも、普通に話しかけてくるのね。エリーと言ったわね。随分、落ち着いているわね」
メリッサはエリーの手をぎゅっと掴む仕草をした。(触れられてはいない)
「あなたは、私とは正反対ね。私はいつもクリフにうるさいとかお喋りだとか言われて…
クリフは、落ち着いた女性が好みなのですって。
そうね、いいことを思いついたわ!
あなた……クリフのタイプだわ。
間違いない。きっとエリーならクリフはいちころね」
「は?旦那様からは離縁届をいただいております。それに…」
エリーは離縁の書類のことや、この結婚に至った経緯、これからどうしたらよいのか分からないこと、途中からは、人生相談のような話をしていた。
「ほんっとに、どうしようもないクズね。
大丈夫。全て私に任せてくれないかしら?
あなたは、半年、ここで暮らすだけでいいの。
ただ、辛いでしょうけれど、クリフに普通に接してくれないかしら?
あぁ、心配しないで、何もする必要はないのよ。ただクリフの話し相手とでもいうのかしら。
決して、あなたの嫌がることはしないように見張っているから。
クリフにも、きちんと伝えるから。
お願いできないかしら?
ちょうど離縁の時期も半年なのでしょう」
「…」
エリーは、どうしたらいいのか分からず、答えることができなかった。
「地獄に叩き落としてやるから!」
物騒な言葉が聞こえ、エリーはメリッサを見る。
「メリッサ様は旦那様に呪いを解く方法はなんとおっしゃったのですか?」
「それはね、クリフに、初めての感情を知ることができたら自ずと解けると」
「初めての感情?」
「そう、クリフに…振り向いてほしかったの。だから…」
ほんのりと頬を染めるメリッサは、まるで恋をする少女のようだった。
「不思議に思うでしょうけれど、あんなどうしようもないクリフのことが、ずっとずっと、好きだったのよ。
相手にしてほしくて、振り向いて欲しかったの。だから私が失踪したら、探してくれると思ったの。
いなくなったら、私の事ばかり気になるはずと思ったの。
でも、まさかこんなバカな
ことをしているとは、知らなかったわ」
「メリッサ様は、ご存知なかったのですか?」
「そうよ、だって、昨日だったかしら、私が外に出られたのは。
こちらでは、もうこんなに年月が経っていたのね。
エリー、あなた、こういうオルゴールを知らない?」
メリッサは、オルゴールの映像を見せてくれた。
「いえ、特に心あたりはありません。このオルゴールがどうされたのですか?」
「これはね、異空間に繋がるオルゴールなの。
私の身体は、今は、このオルゴールの中にあるわ。
これは王家の秘宝の一つなの。
ちょっと、息抜きしたい時とか、逃げたい時とか、自由に出入りできるからよく使っていたわ。
改心の見込みのない犯罪者などもここにいれるのよ。
ふふふ、彼らには、お仕置きする人が必要でしょう?
まぁ、私のストレス発散の場所とでもいうのかしら…
ふふふふ
けれどね、私だけが使える出入口が、ずっと封印されてて。
恐らく、クリフが封印テープを貼ったんだわ。
オルゴールが異空間に繋がっていることは、王族しか知らないことなのよ。
他はクリフね。家族はそんなことしないから。
あら、こうしてエリーには話してしまったわね。
決して口外してはダメよ。
クリフに対しても、うっかり口を滑らせたことあったのよ。妙な事にだけは勘がいいものクリフは。
きっと、何かのはずみで、封印テープが剥がれたのだと思う。クリフが剥がすとも思えないから。
例えば…ぶつかって落ちたとか、暴れたりとかかしら?」
暴れて落ちる?
もしかして、襲われた時かもしれない。
「その、オルゴールは旦那様のお部屋にあったりしますか?」
「うーん、用心深いから、自分の部屋にあると思う。
そうだわ、エリーがクリフの呪いを解くことができると伝えるわ。
その為には、オルゴールが必要だとか言って、エリーに渡すようにクリフを脅すから、大事に持ってて。
きっとよ。
昨日は、久しぶりに出られたことが嬉しくて、高速で飛び回ってしまって、どこから来たのか分からなくなってしまったの。私としたことが……。
今朝は、あなたを見かけて、クリフが私のことなんか忘れて、再婚したのだと思って…」
庭園から私を見つめていたのは、旦那様の妻が気になったからだったのね。
エリーは庭園でのメリッサの様子を思い出していた。
「メリッサ様は、異空間に戻らないといけないのですか?」
「まぁ、色々と制約があるの。お願いできるかしら?」
エリーは悩んでいた。
旦那様を改心させることができるならば、新たな被害者も出さなくてすむわ。
本当は、もう1秒だって会話したくないけれど。
半年か……。
「わ、か、りました」
エリーは言葉に詰まりながら、結局承諾することにした。
何か起こるかもしれないと、皆が緊張していた。
恐る恐る扉を開けたのは、クリフォードだった。
「開けるぞ」
「勿体ぶらずに、旦那さまお早く」
クリフォード、エリーを庇うようにマクスとエリーが入室。
室内は、長年放置されていたとはおもえないほど、埃っぽくもなく綺麗だった。
突然、書き物机からコトリと何かが落ちる。
皆が一斉に物音のした方向を見る。
どこから現れたのか若い女性が、落ちた物を拾い上げていた。
「あなたは…?」
女性がこちらへと振り向く。
「メリッサ…」
若い女性に向かい、クリフォードは驚愕の眼差しを向けていた。
「お二人ともどなたに話しかけておられるのですか?」
エリーとクリフォードには見えている女性の姿を、マクスだけが確認出来ず、怪訝な顔をしていた。
「こんにちは、お久しぶりと言うべきかしら旦那様と…」
「え、エリーと申します。メリッサ様」
緩やかに波打つ金髪の美しい髪に、透き通るような肌、まるでお人形のようだった。
美、美少女…だわ
旦那様と並んだら、超絶美男美女のカップルだわ。
こんな方を蔑ろにしていたというの?
「そう、エリーと言うの。と、マクスだったわね。あぁ、マクスには私のことは視えてないと思うわ。」
「メリッサ!お前のせいで…今までどこにいた!」
「旦那様、眠れなくて苦しんでいるようね?ふふ」
「誰が旦那様だ⁉︎ お前がいなくなって、とっっくの昔に離縁は成立している。」
「そう、そうなのね…捜してもくれないのね」
メリッサは目線を下におろし、悲しみの表情を浮かべる。泣いてしまうのではないかと思われたが、先ほどまでの表情と一変する。
「な~にがそうなのね、だ、メリッサ!
お前のせいで私は」
「クリフ!呪いが解けないのは自分のせいでしょ!」
「だいたいお前は昔から…」
「ちょっとクリフ! 再婚したの……?
そちらが、あなたの……?
ちょっと、エリーさんとお話ししたいから、とりあえず出てって、クリフ!」
メリッサが軽く指を弾くと、クリフォードが部屋の外へ弾き出され尻餅をつく。
「イテッ、ちょっ待てメリッサ!」
マクスは、ゆっくりと丁寧に、見えない誰かによって運ばれていくように、浮かびながら部屋の外へと出される。
扉が閉まり、施錠の音がする。
「これで、ゆっくりお話しができるなね。怖がらないで。あなたに危害は加えないわ。」
メリッサは優雅にソファーに腰掛けると、エリーを手招きした。
誘われるように、エリーもソファーに腰掛ける。
「あなたが、私の後にクリフ…と結婚したの?」
「次と言いますが、正確には68番目のかなと……あ、ですが、行為をするのは100番目とおっしゃってたので、100番目の花嫁かもしれません」
「──は?」
狐につままれたような表情のメリッサに、エリーは、かいつまんで説明を始めた。
マクスから聞いた旦那様の非道な行いもふくめて、全部を。
「な、な、な、なんですってーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
メリッサは、奇声を発しながら、部屋中飛び回り始めた。
「なんてことなの!ばかクリフ!
クソクリフ!許せない許せない許せないおんなの敵!!!
どうしてそんな発想になるの!」
「メリッサさま、メリッサ様!
どうか落ち着いてくださいませ」
エリーは、飛び回るメリッサを宥めようと、必死に声をかける。
メリッサは何周か飛び回ると、落ち着きを取り戻し、ソファーに戻ってきた。
エリーは改めてメリッサを見る。
確かに少し透けている。
本当に幽霊なのかしら?
「あの、メリッサ様は、その、幽霊なのでしょうか?」
「あぁ、この姿だとそうみえるわよね。正確には生き霊というのかしら」
「生き霊?
では、メリッサ様は、生きておられるのですか??」
「ふふふ、あなた、幽霊かもしれないと思いながらも、普通に話しかけてくるのね。エリーと言ったわね。随分、落ち着いているわね」
メリッサはエリーの手をぎゅっと掴む仕草をした。(触れられてはいない)
「あなたは、私とは正反対ね。私はいつもクリフにうるさいとかお喋りだとか言われて…
クリフは、落ち着いた女性が好みなのですって。
そうね、いいことを思いついたわ!
あなた……クリフのタイプだわ。
間違いない。きっとエリーならクリフはいちころね」
「は?旦那様からは離縁届をいただいております。それに…」
エリーは離縁の書類のことや、この結婚に至った経緯、これからどうしたらよいのか分からないこと、途中からは、人生相談のような話をしていた。
「ほんっとに、どうしようもないクズね。
大丈夫。全て私に任せてくれないかしら?
あなたは、半年、ここで暮らすだけでいいの。
ただ、辛いでしょうけれど、クリフに普通に接してくれないかしら?
あぁ、心配しないで、何もする必要はないのよ。ただクリフの話し相手とでもいうのかしら。
決して、あなたの嫌がることはしないように見張っているから。
クリフにも、きちんと伝えるから。
お願いできないかしら?
ちょうど離縁の時期も半年なのでしょう」
「…」
エリーは、どうしたらいいのか分からず、答えることができなかった。
「地獄に叩き落としてやるから!」
物騒な言葉が聞こえ、エリーはメリッサを見る。
「メリッサ様は旦那様に呪いを解く方法はなんとおっしゃったのですか?」
「それはね、クリフに、初めての感情を知ることができたら自ずと解けると」
「初めての感情?」
「そう、クリフに…振り向いてほしかったの。だから…」
ほんのりと頬を染めるメリッサは、まるで恋をする少女のようだった。
「不思議に思うでしょうけれど、あんなどうしようもないクリフのことが、ずっとずっと、好きだったのよ。
相手にしてほしくて、振り向いて欲しかったの。だから私が失踪したら、探してくれると思ったの。
いなくなったら、私の事ばかり気になるはずと思ったの。
でも、まさかこんなバカな
ことをしているとは、知らなかったわ」
「メリッサ様は、ご存知なかったのですか?」
「そうよ、だって、昨日だったかしら、私が外に出られたのは。
こちらでは、もうこんなに年月が経っていたのね。
エリー、あなた、こういうオルゴールを知らない?」
メリッサは、オルゴールの映像を見せてくれた。
「いえ、特に心あたりはありません。このオルゴールがどうされたのですか?」
「これはね、異空間に繋がるオルゴールなの。
私の身体は、今は、このオルゴールの中にあるわ。
これは王家の秘宝の一つなの。
ちょっと、息抜きしたい時とか、逃げたい時とか、自由に出入りできるからよく使っていたわ。
改心の見込みのない犯罪者などもここにいれるのよ。
ふふふ、彼らには、お仕置きする人が必要でしょう?
まぁ、私のストレス発散の場所とでもいうのかしら…
ふふふふ
けれどね、私だけが使える出入口が、ずっと封印されてて。
恐らく、クリフが封印テープを貼ったんだわ。
オルゴールが異空間に繋がっていることは、王族しか知らないことなのよ。
他はクリフね。家族はそんなことしないから。
あら、こうしてエリーには話してしまったわね。
決して口外してはダメよ。
クリフに対しても、うっかり口を滑らせたことあったのよ。妙な事にだけは勘がいいものクリフは。
きっと、何かのはずみで、封印テープが剥がれたのだと思う。クリフが剥がすとも思えないから。
例えば…ぶつかって落ちたとか、暴れたりとかかしら?」
暴れて落ちる?
もしかして、襲われた時かもしれない。
「その、オルゴールは旦那様のお部屋にあったりしますか?」
「うーん、用心深いから、自分の部屋にあると思う。
そうだわ、エリーがクリフの呪いを解くことができると伝えるわ。
その為には、オルゴールが必要だとか言って、エリーに渡すようにクリフを脅すから、大事に持ってて。
きっとよ。
昨日は、久しぶりに出られたことが嬉しくて、高速で飛び回ってしまって、どこから来たのか分からなくなってしまったの。私としたことが……。
今朝は、あなたを見かけて、クリフが私のことなんか忘れて、再婚したのだと思って…」
庭園から私を見つめていたのは、旦那様の妻が気になったからだったのね。
エリーは庭園でのメリッサの様子を思い出していた。
「メリッサ様は、異空間に戻らないといけないのですか?」
「まぁ、色々と制約があるの。お願いできるかしら?」
エリーは悩んでいた。
旦那様を改心させることができるならば、新たな被害者も出さなくてすむわ。
本当は、もう1秒だって会話したくないけれど。
半年か……。
「わ、か、りました」
エリーは言葉に詰まりながら、結局承諾することにした。