ショパンの指先
「寂しそう…ね……。同情されていたなんて、情けないわ。洵と出会った頃は、旦那が浮気していることに勘付きながら別れることができなかった。若くて才能溢れる男を手に入れて、私だってなかなかやるでしょっていい気になっていた。でも、洵が私を好きになってはくれないというのは分かっていた。だから、愛のないセックスは嫌だった。
私にもプライドがあるのよ。でも、私は洵が好きだったし、束縛して上辺だけの恋愛ゲームで満足していた。夫に復讐した気になって、夫が愛人の所に行っていると分かっても昔のように胸が焼けつくような気持ちになって何かを無性に壊したくなるような気持ちを抑えることができた。私にだっているのよ、私だって女なのよって心の中で叫びながら、笑顔で夫を出迎えることができた。
夫のいる私が、洵を束縛する権利はないとは分かっていても、他の女に取られることは我慢ができなかった。夫にも浮気されて、揚句に洵にも本命ができたら、私は誰にすがればいいのって思った。本命じゃなくても、遊びでも、洵が女を抱くのは許せなかった。だってきっと、その女は私より若いのだもの。私が失っていったものを持っている女なのだもの。
でもね、そんな自己中心的で酷い女でも、洵は優しかった。ポーランドに行く前に、洵が私の前に現れたの。ショパンコンクールで貰った賞金を渡しにね。もちろんいらないって言ったわ。援助してもらったお金も全部返すと言われたのも、断った。お金なんて返してもらいたくない。渡した愛情を突き返されるようなものだもの。洵は不服そうだったけど、最後は納得したわ。そして言った。あなたと一緒にポーランドに行くって。
勝手にしたらって言ってやった。凄く悲しかったけど、もう私にはどうすることもできなかったから。お金でしか、洵を繋ぎとめる手段がなかったのよ。その後、あなたが洵の誘いを断ったのを聞いたわ。正直、私には理解できなかった。だから意地悪言ってやったの。あなた達が心底愛し合っているって分かっているから、もう会うなって言ったの。嫌な女でしょ」
「ええ、嫌な女ですね。でも、それを聞いても、私はあなたを嫌いになることができない。どうしてでしょう」
私にもプライドがあるのよ。でも、私は洵が好きだったし、束縛して上辺だけの恋愛ゲームで満足していた。夫に復讐した気になって、夫が愛人の所に行っていると分かっても昔のように胸が焼けつくような気持ちになって何かを無性に壊したくなるような気持ちを抑えることができた。私にだっているのよ、私だって女なのよって心の中で叫びながら、笑顔で夫を出迎えることができた。
夫のいる私が、洵を束縛する権利はないとは分かっていても、他の女に取られることは我慢ができなかった。夫にも浮気されて、揚句に洵にも本命ができたら、私は誰にすがればいいのって思った。本命じゃなくても、遊びでも、洵が女を抱くのは許せなかった。だってきっと、その女は私より若いのだもの。私が失っていったものを持っている女なのだもの。
でもね、そんな自己中心的で酷い女でも、洵は優しかった。ポーランドに行く前に、洵が私の前に現れたの。ショパンコンクールで貰った賞金を渡しにね。もちろんいらないって言ったわ。援助してもらったお金も全部返すと言われたのも、断った。お金なんて返してもらいたくない。渡した愛情を突き返されるようなものだもの。洵は不服そうだったけど、最後は納得したわ。そして言った。あなたと一緒にポーランドに行くって。
勝手にしたらって言ってやった。凄く悲しかったけど、もう私にはどうすることもできなかったから。お金でしか、洵を繋ぎとめる手段がなかったのよ。その後、あなたが洵の誘いを断ったのを聞いたわ。正直、私には理解できなかった。だから意地悪言ってやったの。あなた達が心底愛し合っているって分かっているから、もう会うなって言ったの。嫌な女でしょ」
「ええ、嫌な女ですね。でも、それを聞いても、私はあなたを嫌いになることができない。どうしてでしょう」