ショパンの指先
知らなくても感じるものなのだろうか。私の身体は汚いと。今まで自分の身体が汚いなんて思ったことなかった。誰に抱かれようと、何人に抱かれようと変わらないと思っていた。

 でも私の身体は気付かぬ間に汚れていたのだろうか。洗っても取れないこの汚れを、洵は嫌悪しているのだろうか。

 ……考えすぎだ。

 私は頭を振ってバスルームに入った。

 最近の私はどうもネガティブすぎる。きっと今までは、全てがどうでも良かったから考えなかった。執着するものを見つけてしまうのも難だな。

 頭から熱いシャワーを浴びながら、嫌な考えを洗い流そうとした。

 触れてほしい。私の身体に。

 あの手で、あの指先で。私の敏感な乳首の先端を転がしてほしい。

「洵……」

 指の腹を使って、下半身の敏感な突起を弄る。

 自分の身体を自分で触るのは、初めてだった。一瞬背徳心が頭をよぎったけれど、触れた刺激が気持ち良くて止まらなくなった。

 顔を上げ、虚ろな瞳で天井を見つめる。半開きになった唇からは、熱い吐息が絶え間なく零れていた。

 洵……。お願い触って。私の身体をめちゃくちゃにして。

 洵に触れられたい部分を自分で慰め、私の身体はすっかり内側から火照ってしまった。


 バスルームを出て、リビングを覗き込むと、洵が真剣な表情でピアノの練習をしていた。気に入らないのか、何度も同じ節を弾きなおしている。

長い指先。真剣な横顔。

胸がきゅっと締め付けられて、思わずじっと見つめてしまう。

曲の途中でタンっと音が鳴って、唐突に音が鳴り止んだ。洵は、物憂げに深い溜息を漏らした。とてもセクシーでドキっとする。

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