ショパンの指先
 何でもないことのようにサラっと言われて、なんだか拍子抜けしてしまう。

 シャワー浴びてきたら?という言葉は、私にとっては「セックスするから身体を洗ってこい」という意味だと思っていた。

 でも洵は、きっと違うのだろう。洵は私を抱かない。

 甘く刺激的な意味合いは含まれていない。分かっていても、少しだけ期待してしまう私は、愚か者だろうか。

 真っ白な洗い立てのタオルを渡され、私は脱衣所へ入った。

 シンプルで、清潔感に溢れていた。

 洵は綺麗好きなのだろうか。潔癖症とかだったら嫌だな。セックスを汚いと思っているからやらないとか?

 私は服を脱いでいる最中に、洵の潔癖症疑惑が頭を横切って、急に不安になった。

「ねぇ、洵って潔癖症なの?」

 上半身裸で、下はぎりぎりショーツだけを履いただけの恰好で、脱衣所から身体を乗り出して言った。

「はあ? 違うから。それより、その恰好で出てくるな」

 洵はピアノに向かい合い練習しようとしているところだった。

 女の裸を見て眉を顰めるなんて、なんて守りの固い男だろう。城壁のような奴だ。

 私は脱衣所に戻り、最後の一枚となったショーツを脱いだ。

 大きな洗面台の鏡に自分の裸が映る。

 自分で思うのもなんだが、大きすぎず、小さすぎず形のいいバストだと思う。くびれだってあるし、太腿には程よく肉がついている。痩せすぎということはない。

 それなのに、どうして洵は私を抱こうとしないのだろう。

 私の身体を幾人もの男の手が触れたから? でもそんなこと洵は知らないはずだ。
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