クールなイケメン御曹司が私だけに優しい理由~隣人は「溺愛」という「愛」を教えてくれる~
新しい隣人に心を掴まれて
「今日はお鍋にしようかな」


異常な暑さだった夏を越え、ようやく秋を感じられるようになった。
華やかな春や夏と比べれば、少し控えめではあるけれど、様々な色を感じる「秋」が、私は1番好きだ。


マンションの3階。窓から入ってくる清々しい爽やかな風が、ひらひらと緩やかにカーテンを揺らす。


キッチンで準備しているのは「1人鍋」用の材料。白菜、豚肉、豆腐、しいたけ、にんじん……
さっぱりとポン酢で食べる鍋は、とても簡単で美味しくてヘルシーなメニューだと思う。


「ピンポーン」


突然のチャイムの音――
夜の7時を少し回った頃に鳴るチャイムには、どうしても体がビクッと反応してしまう。


「は、はいっ」


「……すみません、こんな時間に。隣に越してきた桐生と申します。ご挨拶させていただいてもよろしいでしょうか?」


少し低めの男性の声。丁寧で優しい話し方に、ホッと胸をなで下ろした。
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