クールなイケメン御曹司が私だけに優しい理由~隣人は「溺愛」という「愛」を教えてくれる~
「引越しの挨拶の時ですよね?」


「いや……もっと前。1年前の今頃」


「えっ!?」


「俺は、その頃から詩穂ちゃんを知ってたよ」


その言葉に、詩穂ちゃんは目を大きく見開いて、驚きの表情で俺の顔を見た。


「どうして私を?」


「あの日、父の親友が久しぶりに『HPJ』の本社に訪ねてくるからって、昔からお世話になってる俺達も呼ばれて、母と2人で会社に向かったんだ。重役しか使えない専用の入口から入って、誰にも会わずに社長室に向かった」


「拓弥さん、『HPJ』にいらしてたんですかっ」


「ああ。用事を済ませて帰る時、母が化粧室に入った。俺は離れて待ってたけど、母が出てきた時、持っていたポーチを床に落として化粧品を派手にばらまいてしまったんだ」


「え……」


「その顔は、もしかして覚えてる?」
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