クールなイケメン御曹司が私だけに優しい理由~隣人は「溺愛」という「愛」を教えてくれる~
「う、うん。だけど、ちょっと怖そう……かも」


「確かに。でも、僕は憧れます。ああいう大人になりたいです。まあ……あと100万年は無理かな」


「100万年って。航輔君には航輔君の良さがあるんだし、今のままで充分だよ」


「……ですかね? でも、結局、詩穂さんも桐生さんみたいな男性が好きなんでしょ?」


ストレートに核心を突かれ、心を見透かされた気がしてドキッとした。


「ま、まさか。私なんてあんなイケメン御曹司に好かれるわけないし」


「……やっぱり、興味があるんだ」


「えっ……ち、違うよ。違う違う」


航輔君の疑いの眼差しがチクッと痛い。


「おい、姫川、広崎! 早く資料まとめて出してくれ」


「あっ、はい! すみません、すぐやります」


先輩に言われて、やりかけの仕事に戻る。
桐生さんのことは一旦置いといて……と、かなりの無理難題を自分に課して、私はコピー機の前に進んだ。


その時、私のすぐ横をフワッと高貴な香りがすり抜けた。
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