クールなイケメン御曹司が私だけに優しい理由~隣人は「溺愛」という「愛」を教えてくれる~
「でも、自分の分は部屋にあるので……」


「それは明日食べればいいよ。このおでん、まだ温かいし、早く食べたいから座って」


「えっ、あっ、はい。……何だかすみません。ありがとうございます」


ガチガチに固まった体で椅子に座ると、拓弥さんはお皿やお箸を出して準備を始めてくれた。
髪はまだ少し濡れているのに、そんなことは気にしていないようだ。


「おでんの具、何が好き?」


「えっ?」


拓弥さんの生活感溢れる質問に、少しだけ緊張がほぐれた。


「詩穂ちゃんが好きなものを知りたい」


「あっ、はい。えっと、おでんの具は……」


「うん」


「私は……たまごですかね。厚揚げも好きで、あ、でも、こんにゃくも美味しいし……」


その時、優柔不断に悩む私を見て、拓弥さんは結構な声で笑った。
こんなにも屈託のない笑顔を見たのは初めてだ。
優しくて、綺麗で、カッコよくて、明るくて……こんなにも素敵に笑う人は、この世の中のどこを探してもいないだろう。


「いいね。俺は、定番の大根、あとははんぺん」
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