クールなイケメン御曹司が私だけに優しい理由～隣人は「溺愛」という「愛」を教えてくれる～

「やっぱり詩穂！」


「佐和田さん！ 勝手に入るのは止めてくれないか、帰ってくれ」


瑠香の行動に驚き、私はその場から動けなくなった。尋常ではない怒りが伝わり、その顔を見て思わず体がギュッとなった。


「桐生課長！ 詩穂とはどういう関係なんですか？」


「瑠香、止めて。果物をいただいたお礼をしようと思っただけ」


拓弥さんに詰め寄る瑠香を制するように、私は口を挟んだ。


「おでん……？ 私と同じじゃない！ 2人でこそこそ詩穂が作ったおでんを食べてたわけ？」


テーブルの上にセッティングされた食器を見た瞬間、瑠香の怒りが激しくなった。


「俺が無理やり誘ったんだ。詩穂ちゃんを責めるのは間違ってる」


「じゃあ、私のも食べて下さいよ！ 詩穂のより心がこもってて美味しいんだから」


「佐和田さん。俺は、今、詩穂ちゃんと一緒にいたいんだ。君が作ってくれたことに感謝したとしても、それは同じマンションの住人で、同じ会社の同僚だからというだけ。それ以上はない。だけど、詩穂ちゃんは違う。詩穂ちゃんは……俺が唯一、大切にしたいと思える女性なんだ」