クールなイケメン御曹司が私だけに優しい理由～隣人は「溺愛」という「愛」を教えてくれる～

「すまなかった」


「とんでもないです。拾っていただいてありがとうございます」


「……頑張って」


周りには聞こえていない、私だけがもらった「頑張って」に、胸がキュンとなるのがわかった。


嬉しい――


こんな気持ちは初めて過ぎてコントロールが難しい。このまま「キュン」が重なれば、私の心臓はもつだろうか。


高校時代、私はままごとみたいな恋愛をして、あっけなく瑠香に彼氏をさらわれた。
だけど、私に魅力がなかっただけなのかも知れないし、本当に彼を好きだったのかもわからない。
今となってはもうどうでもいいことだった。


最高に素敵な隣人――拓弥さんに出会えたから。


拓弥さんとの距離は近いようでとてつもなく遠い。
サハラ砂漠で歩いてオアシスを探すようなもの、エベレストに軽装備で頂上まで登るようなもの、私が拓弥さんに振り向いてもらえる確率は……果てしなくゼロに近い。