【受賞】ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
「腐れ縁みたいなものよ」
「照れちゃって。ずっと旦那さんと仲がいいのよ、この人」
 仲の良さそうな婦人方に、柚花の顔は自然とほころんだ。

「あら、この指輪かわいいわね」
 照れ隠しなのか、ショートカットのご婦人がショーケースの指輪を見て言う。

「どちらですか?」
「このお花とちょうちょのモチーフの」
 ピンクトルマリンの花に蝶が遊びに来ているかのようなデザインの指輪だった。
 柚花はそれを取り出し、トレイに載せて差し出す。

「どうぞご試着ください」
 婦人はうきうきと指にはめて、それから残念そうにトレイに指輪を戻した。

「若い子向きのようだし、やめておくわ」
 そうは言ったものの、ご婦人はちらちらと指輪を見ていた。

 依頼された洗浄を終えると指輪を拭き上げ、お返しする。本来はお買い上げのお客様にだけお渡しするジュエリー磨きのクロスも一緒に二人に渡した。

「今日は失礼がありまして、大変申し訳ございません。ご来店ありがとうございました」
「いいのよ」
「また来るわね」
 二人は笑い合いながら退店し、柚花はホッと息をついた。

 入れ違うように京吾が出勤してきた。
 柚花の胸がどきんと鳴った。
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