【受賞】ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
「深雪山さん、やっぱり恋人って嘘でしたねえ」
 萌美ににやにやと言われ、思わず顔が引きつった。

「昨日、京吾さんから聞いたんです。この前京吾さんに抱きついた人、婚約者ですって」
 柚花は言葉を失くした。
 偽装とはいえ、婚約者がいるのに恋人役をしてくれたなんて。

 申し訳なくてただ胸が痛い。
 いや、胸が痛いのはそうではない。――自分が彼に恋をしてしまったからだ。
 このあとの話というのは、偽装は終わりという話だろうか。きっとそうだ、仕事の注意なら勤務中にするだろうから。

 柚花はきりっと顔を上げた。
「今は仕事中です。私語は謹んでください」
「なによ」
 萌美は柚花を睨む。
 が、柚花は目をそらさない。

「どうしました?」
 戻って来た沙知絵に声をかけられ、萌美は逃げるように柚花から離れた。

「なんでもないですよ」
 柚花がにこっと笑うと、沙知絵は困ったように首をかしげた。
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