警察の極上プロファイラーが実験と称して私を溺愛してくる
 彼がタクシーを呼び、小夜歌は彼に促されて一緒に乗りこんだ。
 タクシーは真玄の指示で撹乱するようにぐるぐると回り道をした。尾行を警戒したことは小夜歌にもわかった。

 ようやく止まったのは夜空にそびえ立つ高層マンションの前で、小夜歌は唖然と見上げた。

「プロファイラーってそんなにもうかるの?」
 思わず口にした言葉に真玄は苦笑する。

「そんなわけないだろう。母の遺産だ」
「遺産……」
 ということは彼の母はすでに亡くなっているわけで、なんだか悪いことを聞いてしまった気がした。

 両側を緑に囲まれたエントランスを通り、指紋認証の入口をくぐるとホテルのようなロビーがあった。
「お帰りなさいませ」
 声がしてそちらを見ると、コンシェルジュが丁寧に頭を下げていた。

「お疲れさまです」
 真玄は慣れた様子で返し、小夜歌はなんとなく軽く頭を下げた。
 幾何学の形をした謎の彫像を眺め、真玄に続いてエレベーターに乗る。

「このマンションなら不審者の侵入は防げるが、仕事はすぐには辞められないだろう。申請から退職日まで何日だ? 有給でどうにかなりそうか?」
「……たぶん大丈夫。一カ月かかるけど、全部有給でまかなえる」

「退職代行を使うか?」
「電話と郵送でどうにかなると思う」

「念のために言うが、このマンションの住所は書くなよ。タクシーで迂回した意味がなくなる」
「わかった」
 自分が迂闊なのは認めるが、そこまで抜けていると思われるのはなんだか悔しかった。
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