警察の極上プロファイラーが実験と称して私を溺愛してくる
「そんなことを言わないでくれ。君を失うくらいなら俺は警察を辞める」
「ダメよ。あなたは警察に必要な人だわ」
「だったらもうそんなことを言わないでくれ」
 小夜歌はなにも言えず、抱きしめ返すこともできずにじっと彼の体温を感じた。

 この温かくて逞しい胸にすべてをゆだねてしいまいたくなる。
 だけど、きっとそれは許されない。彼が仕事に専念するためには。

「君は頑固だ、この程度では納得しないだろう。速攻でなんとかするから、君を襲った犯人が捕まったらまた話をしよう。約束だ。君がどういう結論を出すとしても、勝手にいなくなることだけはやめてくれ」
 小夜歌はなにも言わず、ただ頷いた。

 彼は名残惜しそうに小夜歌をもう一度抱きしめてから離れた。
 玄関を出る彼に、「気を付けて」と声をかける。

 扉が閉まった直後にはもう涙が溢れていて、小夜歌は零れるに任せて涙を流した。
 こんな自分がそばにいていいわけない、と思う。

 自室として与えられた部屋で荷物をまとめる。
 最初からそうするべきだった。ウィークリーマンションとかそういう場所を借りて、最悪は両親のいる実家を頼ることも考えて。
 いや、むしろ最初に両親を頼るべきだっただろうに、彼に縋ってしまった。あのときの自分は恐怖で混乱していたのだろう。

「バカだな、私」
 涙がさらに溢れる。
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