警察の極上プロファイラーが実験と称して私を溺愛してくる
「車を出せ」
「どこへ」
「どこでもいい、早く出せ!」
 小夜歌は車のスタートボタンを押した。エンジンが始動し、ライトがつく。

 ハンドルを握ってアクセルを踏むと、車は静かに走り出した。
 交差点に差し掛かるたび、どちらに行くのかを尋ねる。彼はいらいらしながら、真っ直ぐだの右だのと指示をする。が行き当たりばったりにしか思えなかった。

 このまま警察署に向かったらどうなるだろう。
 そう思うのだが、常に構えられているナイフが怖くて勇気が出ない。

 赤信号で止まって対向車線を見ると、警ら用の原付バイクにのった警官が見えた。

 お願い、助けて。
 パッシングしたらいいだろうか。いや、それでは浦岡にバレる。ハザードも同様だ。どうしたらこの緊急事態をわかってもらえるだろうか。

「余計なことするなよ」
 隣から浦岡がナイフを突き出して言う。

「わかってます」
 震えながら答え、小夜歌は必死で警官を見つめる。が、夜では車内の様子などわからないだろう。

 信号が変わると、ゆっくりと車をスタートさせた。なるべく警官にこちらを認識してもらいたかったからだ。
 だが、警官は気づいた様子もなくすれ違う。
 ああ、やっぱりダメだった。
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