眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛
「ガッ!」
「イヴ!」

 稲妻に打たれたイヴはガクリと頭をもたげ、動かない。だが、しばらくしてからピクリ、と肩が動く。

「……せ」
「は?」
「腕を離せと言っている」

 イヴが顔を上げてイヴの兄を睨みつける。そこには、イヴなのにイヴではない違う人間の表情が浮かんでいた。イヴの兄たちは驚いて手を離すと、イヴはゆっくりと立ち上がり腕を回してから首をパキリ、パキリと鳴らす。

「まさか……そんな」

 ローラが両手で口を覆い、息を呑み後ずさる。今にもその場に崩れ落ちてしまいそうで、ヴェルデは思わずローラの体を支えた。

「エルヴィン殿下……!」

 ローラの呟きに、イヴはローラへ視線を送り、ニヤリ、と笑う。その笑みはイヴの優しい微笑みではなく、卑しく穢らしいゲスい笑みだった。

「この体が俺の末裔か。なるほど、悪くない」

 自分の体の状態を確認しながらイヴの体を乗っ取ったエルヴィンは満足そうに頷く。それを見て、イヴの兄たちはエルヴィンの足元に跪いた。

「お前たちも俺の末裔だったな。尽力に感謝しよう」
「本当に、甦ったのですね……ありがたきお言葉」

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