眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛
「自分でもよくわかってないんだ。ただただ無我夢中で、ローラ嬢を助けなければと思ったらああなってた」

 フッと微笑むイヴを見て、ローラは涙を浮かべる。

「ありがとう、イヴ。あなたのおかげよ」
「そんなことない。ローラこそ、俺を助けようとしてくれただろ」

「どうして……どうしてだ……エルヴィン殿下がイヴの体から抜けなければこんなことには……」

 ぶつぶつとクローが一人で呟いている。そんなクローへクレイは冷ややかな視線を向けた。

「体となる本体の同意も得ないまま生きてる人間に憑依させれば、本体の魂がそれを拒絶する。拒絶が強ければ強いほど弾き飛ばされるのは当たり前のことだ。そんなこともわからないまま禁忌に手を出したのか、愚か者」

 クレイの怒りに満ちた言葉に、クローはいつの間にか涙を流し、嗚咽を漏らす。

「そういえば師匠、よくここがわかりましたね」

 ヴェルデの言葉に、クレイは眉を下げて微笑んだ。
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