眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛
 クローが涙を浮かべて懇願するが、クレイは感情の籠らない瞳でクローを見つめている。そして、クローの額に浮かび上がった魔法陣が黄金に輝くと、クローの体から光が四方八方へ飛び散った。

「あ、ああ、俺の、魔力が……」

 クローは呆然としながら宙を見つめている。そんなクローを、クレイは魔法で拘束した。

「……!イヴ!」

始終を見届けていたローラはハッと我にかえり、イヴの元へ駆け寄る。イヴは体を起こしているがまだ立ち上がれる様子ではない。それでも、イヴはローラを見て微笑んだ。

「何とか、大丈夫だ」
「よかった……」

 ローラが安堵の表情を浮かべると、ヴェルデとフェインもイヴとローラのそばへ駆け寄った。

「怪我を治そう」

 ヴェルデがそう言うと、イヴの首元が一瞬輝き、剣でつけられた切り傷が消えた。

「それにしてもよく自力でエルヴィンを追い出したな」

 フェインが感心したように言うと、イヴは苦笑した。

< 155 / 190 >

この作品をシェア

pagetop