眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛
「魂のことは冥界で然るべき処置をとってもらう。現世で生きている我々がどうにかできることではないからね」

 そう言うと、エルヴィンの魂は黒い空間へ引き摺り込まれる。そして黒い空間は消え、そこには何も無くなった。

「さて、決着は着いた。後々の詳しいことについては追って連絡するよ。イヴは責任を持って私が転移魔法で国に送り届けよう」

 クレイの言葉に、イヴがローラの顔を見た。何かを言おうとしているが、本人も何が言いたいのかよくわかっていないような複雑な顔をしている。

「別に、これが今生の別れになるわけじゃない。色々と落ち着いたら手紙でも書けばいいだろ」
「……いいのか?」

 ヴェルデの提案にイヴが驚いた顔で尋ねる。ローラも少し驚いた表情でヴェルデを見つめるので、ヴェルデは苦笑した。

「ローラが嫌でないのなら俺は構わないよ。もちろんローラ宛の手紙は俺も読むし、ローラからイヴ宛への手紙も出す前に目を通すけど」

(目を通すんですね……)

 信用されていないわけではないのだろうけれど、ヴェルデの気が済むのであればそれでいいか、とローラは微笑んで頷いた。

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