眠りの令嬢と筆頭魔術師の一途な執着愛
 ヴェルデの言葉に、ハッとローラが顔を上げた。その顔を見て、ヴェルデは悲しげに眉を下げる。

「そうなんだね。彼女のこと、言ってなくて悪かった。正直、ノエルのことはすっかり忘れていたんだ。本当だよ、信じてくれ」

 ローラの両腕を掴むヴェルデの手に力が入る。

「いえ、いいんです。私がヴェルデ様と出会う前にヴェルデ様にその、お付き合いしていた方がいてもおかしくないとは思っていたので」
「でも、気になるんだろう」
「……その、なんと言いますか、ヴェルデ様もノエル様とキスしたり、体を、重ねたりしたのかなと思って……それにノエル様の他にもきっとお付き合いされた方がいたんだろうなって。でもそれは当然のことですし、気にしても仕方のないことだとわかっているんです。わかってはいるのですけど、胸の中が痛いといいますか。……ごめんなさい。こんな気持ちになるのは初めてで、どうしていいかわからないのです」

 申し訳なさそうに微笑むローラを見て、ヴェルデは胸が張り裂けそうになる。そのまま、ヴェルデはローラをきつく抱きしめた。

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