ロマンスに心酔
「あの、実は⋯⋯。せんぱいとわたしがお付き合いしている、というのは、嘘、だったんです」
「へっ!?」
「実はわたし、あの頃、ストーカー被害に遭っていて⋯⋯」
わたしとせんぱいにまつわるすべてを、洗いざらい話す。
「あの、なので、嘘ついてました⋯⋯すみません」
「いや、それはぜんぜんいいんだけど、青葉さんがそんな危険な目に遭ってたなんて⋯⋯」
田中のドン、許せねえ、なんて怖い言葉を吐き出すものだから、河野さんは敵に回してはいけない。
「いやでも私、青葉さんと前ちゃんが付き合ったって聞いて、最初は意外だなって思ったんだけど、そういえば同期飲みのときに、前ちゃんが青葉さんのことよく訊いてきたなあって思い出したんだよね」
「え?」
「それこそ青葉さんが入社した頃に、“総務に入ってきた子、どう?”って。その後も、“新人にあんま仕事押し付けんなよ”とか、“かわいがってやってんの?”とか、前ちゃんにしてはえらい興味もってるなあって」
口に入れた親子丼の咀嚼が完全に止まった。
そんな風に、影でも気にかけてくれていたのか。