ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「彩女さんって、ずっと上を見上げて『絶対にあそこまでたどり着いてやる!』って思っているタイプですよね。そういうところ、本当に大好きです」

 飼い主とペットという、とても不埒な言葉から始まった関係。2か月近く経ったいま、それが少しずつ変化しているようにも感じる。彼の口から「好き」という言葉が出てくるたびに、心が潤っていくから。

 もちろん「そういう意味」じゃないのは分かっている。でも慕ってくれてはいると思うし、それだけで十分だった。これ以上は望まない。贅沢すぎるもの。

「そういえば、後輩さんは、どうすることになったんですか?」

 思い出したように、ガクくんが訊いてきた。井上さんとの話を簡単に伝えると、ガクくんは少し驚きつつ、感心したように何度も頷く。

「結婚から一転、別れるとは……なかなか強い人ですねぇ」
「確かに、いざ腹を決めたら、すぐに前を向く彼女の性格が出ていると思った。芯がしっかりあって、強いわよね」
「彩女さんだって、強いでしょ」

 そうなのかな。私は、いろいろなものから逃げているだけだと思う。結局、ひとりで生きていく決意も貫けずに、ガクくんを頼っているし……。

 ああ、なんだか胸のつかえが取れない。私は一体、なにに対してモヤモヤしているんだろう。
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