ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「やっぱり普段使わない筋肉を使っているから、ガチガチです」

 太ももをさすりながら、ガクくんが苦笑する。

「全然滑れないのに、どうしてここへ来ようと思ったの?」
「ここまで滑れなくなっているとは思わなかったんですよ。彩女さんは、さすがですよねぇ」

 なんとなく、はぐらかされた気がした。私が訊きたいのは、そういうことじゃないのに。

 よく来ているのなら分かる。だけど、子どものとき以来なのに、どうして突然来ようと思ったのか。彼の頭にスケートが思い浮かんだ、その理由が知りたかった。

 嘘はつかないけれど、奥にある本音は出さない。ガクくんには、そういうところがある。
 拒絶されたように感じて、なんだか寂しい。やっぱり私は、彼の心の奥には踏み入れられないんだ。

 恋人に見られて浮かれているなんて、バカみたい。なにを勘違いしているのかしら。

 私とガクくんの関係は、お互いの利益のうえに成り立っている。ただそれだけのこと。
 デートをするのも、キスやセックスをするのも、愛情があるからじゃない。そんなの、最初から分かっていたことじゃない。

「私、運動神経はいいのよ」

 感情を胸にしまって言うと、ガクくんは屈託のない笑顔を見せた。
 今度は、顔に出さずにいられたかな。これでいいのよね。
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