ワケありニートな年下ワンコを飼いました
「ガクくん、止まり方を」
「ちちち、ちょっと待ってぇ!」

 私が動いた反動でスピードが出てしまったのか、ガクくんがこちらに向かって突っ込んでくる。
 避けると彼が転んでしまうから、そのまま抱きとめて、なんとか足を踏ん張った。

 あぁ、よかった。ちゃんと止まれたわ。

「ガクくん、大丈夫?」
「ふ……ふ……」
 
 抱き合う姿勢のまま、私の肩に額をくっつけて、ガクくんが体を震わせる。も、もしかして、泣いている?

 ……と、思ったら。次の瞬間、弾けるような笑い声が耳元で響いた。

「あはははは! やっばい、彩女さん、かっこよすぎですって! めちゃくちゃ頼りになるし、思いきり受け止めてくれるし……あぁもう、最高!」

 あまりにケラケラ笑うから、私も思わず吹き出す。
 ガクくんの必死な顔が、おかしくてかわいくて、愛おしくて。もしかして、料理に四苦八苦している私も、彼から見るとこんな感じなのかな。

 ふたりで顔を見合わせてひとしきり笑ったあと、ガクくんの脚が少し張ってきたみたいだから、いったんリンクを出てベンチで休憩することに。

 リンクサイドで提供されていたココアを手渡すと、ガクくんは心底ほっとした表情を浮かべた。

「あぁ~、ちょうどいい甘さ」
「うん、美味しいわね」

 体を動かしたあとだから、なおさら美味しく感じる。もちろん、ガクくんと一緒だからというのもあるけれど。
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