ワケありニートな年下ワンコを飼いました
 適度な距離を保ちつつ、お互いの欲求を満たす。こうしてデートをするのも、良好な関係を築くため。
 いつかは終わる関係だもの。深入りを避けるのは、当たり前のことだった。

「もうちょっと滑っていきませんか? もっと、彩女さんに教えてもらいたいです」

 ココアを飲み終えると、ガクくんは張り切ってスケート靴の紐を結び直した。

「脚は大丈夫なの?」
「はい、ココアで復活しました!」

 このかわいい笑顔が見られるなら、それだけで十分なのに。いつの間にかどんどん欲深くなってしまって、恥ずかしい。

「さすが、若いわね。じゃあ今度は、もっとスパルタにしようかな」
「えぇ! 優しくしてくださいってばぁ!」

 またふたりで笑い合いながら、リンクへと戻る。うん、やっぱり幸せだわ。

 モヤモヤしてしまうのは、きっと休暇中で時間があるから。生活が激変して、初めての長期休暇だものね。無意識に、いろいろなことを考えてしまっているのかも。

 それから1時間ほどスケートを楽しんで帰宅すると、ガクくんも私も、脚が筋肉痛になっていた。
 
 できることなら、1日でも長く、こんな日常が続いてほしい。
 ベッドに入るなりすぐ眠りに落ちたガクくんの顔を見ながら、願ってはいけないことをこっそり願って、その日は眠りについた。
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